元美容師が考える抜毛症で美容室に行くのが怖い人に知ってほしい事

お悩み

今回はタイトルに記載した通りの内容になるのですが、都内数店舗で美容師を10年以上勤めていた経験がある元美容師のわたくしが思う、抜毛症についての考えや誤解について書いていこうと思います。本記事は抜毛症を全く知らない美容師さんや自身の頭髪の状態で美容室に行くのが怖いまたは迷惑なのではと感じている方にぜひ見て頂きたい内容になります。私は医者ではないので医学的な観点からの発言はできませんし、科学的な証明もありません。個人の意見として読んでいただけると幸いです。

また、抜毛症ではない薄毛に悩まされる女性も多くいらっしゃいます。そんな方の不安についても同様のことが言える場合がありますので抜毛症ではないけど薄毛で美容室に行くのが恥ずかしいというお悩みをお持ちの方も是非ご覧ください。

抜毛症の症状と原因とは

抜毛症とはトリコチロマニアともいわれる精神疾患です。日常生活の中にある強い不安や精神的なストレスが重なり発症すると言われています。私がお客様として対応させていただいた方の中では10代~40代ぐらいに多い印象で若いほどに抜毛症で悩まれている方が多かったです。

症状についてですが、ストレスを軽減するために自身の毛を無意識のうちに抜いてしまう症状です。この無意識というのがとても厄介で中々、本人の意思で制御しにくいというのが抜毛症が進行していく要因になっています。

私が見てきた中では言われなければわからないくらいの症状の方から頭髪のほぼ全部を抜ききってしまい、まばらな長さで伸びてきている方など症状の進行具合は人それぞれでした。中にはお店まではウィッグを被って来店されることも珍しくはありませんでした。

あくまでも自身で髪の毛を抜いてしまう状態を指しているので人に移ったりするようなことは絶対にありません

美容師でも抜毛症を理解している人が少ない

私が勤務していた美容室は3店舗をありましたが、その中で抜毛症を知っている人がいたのは1店舗だけでした。ほかの2店舗の美容室のスタッフはオーナーでさえ抜毛症を知らない状態で、実は美容師さんでも抜毛症を知らないことが多いのです。

私が働いていたお店では症状の差はありますが抜毛症でお悩みのお客様が多く来店しており、実際にいろいろとお話をしていただいたので特に珍しいと感じる事もなく通常のお客様と同じように担当していました。

お客様として抜毛症に悩んでいる方の話をお伺いする機会が多かったのでとても驚くとともに残念と感じることがあったのですが、抜毛症を原因に来店を断られたということです。美容室に来店の予約をお電話でした際に、抜毛症であることをお伝えすると何故か一方的に対応できないと突き放されたことがあると仰っていました。

すべての美容師さんにご理解いただきたいのは前述しましたが抜毛症は皮膚の疾患などでは決してなく、自身で髪を抜いてしまう行為ですので人に移るものではないです。当然ながら通常の健康な方と何ら変わりません。

実際に接客した経験からも感情の波があったとしても慣れてくるとたくさんお話をしてくださるとても良いお客様ばかりでした。ですので、全く問題なくコミュニケーションをとることができましたのでカウンセリングで要望を聞く際にも支障をきたすようなことはありません。

※注意 美容室での特別扱いはありません

上記では美容師さんに対してお伝えしましたが、実際に美容室に来店を希望している抜毛症に悩んでいる方からの困ってしまった要望がありましたのでそちらもご紹介しておきます。こちらは、お店側としてはとても迷惑な行為で、ご理解いただけない場合は来店を断られる原因にもなります。

  • 来店時間にほかのお客様の予約を取らないでほしい
    これは美容室にとってとても迷惑な行為です。ほかのお客様も様々な事情から来店される方がいる中でその時間の予約を制限することはできません。予約時に比較的予約の少ない時間をご案内したり、来店時に出来るだけ窓際のお席から離れているセット面にご案内などはできますが、当日の混み具合によっては保証するものではないのでご了承いただけない場合はお断りすることもあります。どうしてもほかのお客様がいない方が良いときは多少割高になりますが完全個室の美容室のご利用をお勧めしております。
  • パーテーションで隠してほしい
    たまたま店舗に用意がある場合には対応できるかもしれませんが、用意のない場合に準備することは難しいことをご理解ください。私がご要望を受けた際には費用が発生することや場所を取ってしまいほかのお客様のご迷惑になることからお断りさせていただきました。

上記の通り、ほかにもご利用したいお客様がいて同様に施術料金をお支払いしております。その中で通常は行っていないサービスを確認するのは問題ありませんが強要するのはお店にとっての迷惑行為となります。実は今回お話ししたお客様の例についてですが、すべて本人から伝えらえたのではなく親御さんからの要望でした。自分の子供が心配な親心には理解を示したいとは思いますし、事情もあります。ですが、それはほかのお客様には関係のないことです。また、同じ料金でサービスがまったく異なるのは不公平となります。すべてのお客様を平等に対応するために特別扱いはできませんのでそのご理解だけ頂ければと思います。

抜毛症で美容室に来店するのは迷惑なのか

電話予約の時にお客様から実際に相談されたことがあるのですが、『抜毛症の人が美容室に来店するのは迷惑でしょうか』と聞かれたことがあります。個人的な意見としては、前述した内容に理解をいただければ、どのような状態でも大歓迎と考えています。

ただし、進行状態にもよりますが対応できるカットについてはある程度限界もあります。ですので、実際に来店いただきカウンセリング後にご希望のスタイルを作るのが難しい場合があります。もちろん今後、改善をした際に目指したいスタイルがあり、それに向けて長期的な目線で整えていきたいとのご要望であれば全く問題ありません。

また、ヘアカラーについての質問も多くありましたが、抜毛症とは別に何かしらの皮膚の疾患がなければ施術は基本的には可能です。ヘアカラーをする際にはパッチテストと呼ばれるチェックを行い、お客様の肌質が薬剤に対してアレルギー症状を示さないかを調べたりはしますので不安な場合は美容師さんにぜひご相談ください。

抜毛症や薄毛のお客様を見て思うこと

私が対応していたお客様に言われたことがあります。
『髪が薄いことを笑われた』
『抜くの辞めたらいいじゃないですか!と言われた』

衝撃的でした。こんな無神経な美容師がいるんだなと。抜毛症は私が美容専門学生の時点で学習することはなかったのでもしかしたらいまだに授業で教えていないのかもしれませんが同業者としてとても申し訳なく思いました。一度味わったトラウマは簡単に拭えるものではありません。ですので、弁明できるものではないのですが、やはりそのような美容師がいることは事実だと思います。

ですが、決して誤解していただきたくないことがあります。どのような職場でも学校でも人を悪く言う人間は必ず一定数存在します。美容師全体がそうではなくそのような発言をする人の人間性に問題があるだけだということです。

少なくとも私の周囲にいた美容師さんで抜毛症や薄毛のお客さんを馬鹿にする人は一人としておりませんでしたし、みなどのようにするのがお客様に対して本当に最適なのかをしっかりと考えていました。実際に勉強会として議題に取り上げていたほどでスタッフ同士で情報を共有して討論を交わしたほどです。何故ならお悩みの多いお客様ほど美容師にとっては腕の見せ所だからです。

それとこれは男性のお客様にもいえる事ですが美容師にとってハゲているお客様や薄毛のお客様を対応することは日常茶飯事です。毎日何人も見ています。見慣れ過ぎて面白いと感じることはまずないはずです。たまに陽気なお客様で自身の薄毛をネタに面白おかしく話をしてくれる方がいますが全然笑えません。これは気を使っているわけではなく純粋に慣れすぎて面白くもなんともないのです。

帽子やウィッグの使用について

抜毛症や薄毛にお悩みの方には常に帽子を被っている方やウィッグを使用している方をよく見かけます。個人的な見解として帽子よりはウィッグを使用する方がよいと考えます。

将来的に抜毛症が改善されたときにファッションをより楽しめるよう希望のスタイルのウィッグを使用することで明確なイメージを持つことができ外出するときの抵抗も減るはずです。最近では薄毛ではなくても気分転換などを理由にウィッグを使用している女性も多くいらっしゃいますので単純におしゃれの一つとして楽しめるのではないでしょうか。

もしご希望のスタイルが見つからない場合、美容室ではウィッグのカットにも対応してくれるところが割と多いです。メニューに記載しているところはあまり多くないかもしれませんが、電話で確認すると対応してもらえる場合が多いです。ただし、いくつか注意点があります。

・お店によってはウィッグのカットは割高になる場合がある
・当たり前ですが一度切ってしまうと元には戻せません
・カット後に希望と少し印象が異なっても返金やウィッグの弁償が難しい
(ただし、明らかに美容師さん側に過失があった場合は相談しましょう)

上記をご理解していただきご予約の際にぜひ相談してみてください。

最後に

色々と厳しい内容もあったかもしれませんが、もし不快な感情を持たせてしまっていたら申し訳ありません。勘違いしていただきたくないのは決して気分を悪くさせるために書いた記事ではありません。少しでも勇気を出してファッションを楽しんでもらうために今回は書かせていただきましたし、少し厳しいことをあえて書きました。

私は髪があっても無くてもファッションを楽しむ権利があると思いますしそんな時に相談できる職業が美容師だと思っています。そんな感情を馬鹿にするような人は美容師だと思いません。相談する際や来店の際にはとても緊張すると思いますし、不安で怖いかもしれませんが勇気を出してお話すれば真剣に向き合ってくれる美容師さんが必ずいるはずです。

無理してでも行けとは言えませんが、もしお気持ちの中で少しでも興味を持たれましたら是非お電話だけでも大丈夫ですので美容師さんにご相談してみてください。本記事が抜毛症や薄毛でお悩みのの方に少しでもお力になれれば幸いです。

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